妊娠および授乳時のお薬について

 妊娠中や授乳中の医療機関にかかる時の心配事の一つとして「お薬の投与」の心配があるかと思います。妊娠中に母体に投与されたお薬は、一部をのぞいて胎盤を通過して胎児へと送られます。

 そのため重要なのは、そのお薬が胎盤を通過しやすいお薬か、そしてお薬が胎児に届いた時の赤ちゃんの状態が大事になります。

 難しい話になりますが、薬物の胎盤通過性は分子量が300~600程度の薬物は比較的容易に胎盤を通過し、1000以上の薬物は通過しにくい。また、脂溶性の薬物は水溶性の薬物に比較して胎盤を通過しやすい。などが挙げられますが、この辺りは一般の方にはあまり関係ないかもしれません。次に妊娠時期による胎児への影響の表を示します。

妊娠の各時期における胎児への影響

妊娠の各時期 胎児への影響
妊娠4週未満 まだ胎児の器官形成は開始されておらず、母体薬剤投与の影響を受けた受精卵は、着床しなかったり、流産してしまったり、あるいは完全に修復されるかのいずれかである。ただし、残留性のある薬剤の場合は要注意である。
妊娠4週から7週まで 胎児の体の原器が作られる器官形成期であり、奇形を起こすかどうかという意味では最も過敏性が高い「絶対過敏期」である。この時期には本人も妊娠していることに気づいていないことも多い。
妊娠8週から15週まで 胎児の重要な器官の形成は終わり、奇形を起こすという意味での過敏期を過ぎてその感受性が低下する時期。一部では分化などが続いているため、奇形を起こす心配がなくなるわけではない。
妊娠16週から分娩まで 胎児に奇形を起こすことが問題となることはないが、多くの薬剤は胎盤を通過して、胎児に移行する。胎児発育の抑制、胎児の機能的発育への影響、子宮内胎児死亡、分娩直後の新生児の適応障害や胎盤からの薬剤が急に無くなることによる離脱障害が問題となる。
授乳期 多くの薬剤が母乳中に移行する。児には消化管を通しての吸収に代わる。
  • 妊娠すると出産への期待が高まる一方で、おなかの赤ちゃんが元気に育ってくれるのか心配になります。お薬を飲んだ後に妊娠が分かって、赤ちゃんへの影響を心配する人もたくさんいらっしゃいますが実際は、多くのお薬は、妊娠中に飲んでも大丈夫だといわれています。
    その一方、先天的な病気をもつ赤ちゃんは、くすりの服用とは関係なく3~5%程度の割合でいます。

  • また、必要なお薬を飲まなかったために、お母さんの病気が悪化し、赤ちゃんに先天的な病気が起こったり、発育が悪くなったり、おなかの中で赤ちゃんがなくなってしまうこともあります。
    妊娠中であっても、必要があればお薬を使います。お母さんの健康は赤ちゃんに直結しますので、お薬をのんでお母さんの病気を治療した方が赤ちゃんの健康にとって良いことも少なくありません。

歯科における一般的なお薬の影響について 

各種経口解熱鎮痛剤の妊婦・授乳婦への適応

解熱鎮痛薬 商品名 妊婦への適応 授乳婦への適応
アセトアミノフェン カロナール 有り 添付文書への記載なし
インドメタシン インテバン 無し 授乳中止
ジクロフェナク ボルタレン 無し 授乳中止
ロキソプロフェン ロキソニン 有り 授乳中止

 

各種経口抗菌薬の妊婦・授乳婦への適応

系統 抗菌薬 商品名 妊婦への適応 授乳婦への適応
ペニシリン系 アモキシシリン サワシリン 有り 授乳中止
セフェム系 セファクロル ケフラール 有り 授乳中止
セフジニル セフゾン 有り 授乳中止
セフカペン フロモックス 有り 添付文書への記載なし
セフジトレン メイアクト 有り 添付文書への記載なし
マクロライド系 クラリスロマイシン クラリス 有り 授乳中止
アジスロマイシン ジスロマック 有り 授乳中止

 どんな薬においても妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する事が一般的です。*また、妊娠後期にピボキシル基を有する抗生物質を投与された妊婦と、その出生児において低カルニチン血症の発現が報告されている。

 いずれにせよ、妊娠においてはご自身の状態を把握し治療前の申告や質問などが大事になりますので受診の際は、その旨必ずお伝えください。

参考資料:

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 「ママのためのお薬情報」

公益社団法人 日本産婦人科医会 「女性の健康Q&A]