保険診療の最小限の機能回復をする治療だけではなく、治療の質や精度などQOL(生活の質)の向上を考慮した診療科目です。

自由診療と保険診療の違い

 歯医者での治療は、通常の場合なら保険診療で行うことが多いと思われます。歯医者で自由診療を選ぶ基準はセラミックで綺麗な白い歯を入れたい、銀歯が嫌だから白い歯を入れたいなど審美的な面だけで選択されていませんか?

 自由診療とは、文字通り自由な診療ですが何が自由かというと、保険診療においては治療の手順や材料など事細かに決められています。逆に言うと保険診療においては全部マニュアル通りに行わないと治療が進められません。その点自由診療は、使用する材料も医療法および医学的見地より適切ならどのような材料および薬剤を用いても問題ありません。

それでは、前歯のかぶせ物を例に保険診療と自由診療を比べてみましょう。

形成:虫歯を削る
印象:型取り
咬合採得:かみ合わせ
テンポラリークラウン:仮歯
補綴物作成:技工所で歯を作成
装着
 

 通常は保険診療でも自由診療でも上記のような工程で治療を進めます。それでは、歯医者で治療して貰って出来た歯で「良い歯」とはどんな歯だと思いますか?

当然、白くて綺麗な歯は良い歯です。しかしながら、保険診療でも前歯の治療ならある程度綺麗な白い歯が入ります。白い歯が良い歯だと考えると、歯が完成してすぐの状態では、一般の方では自由診療と保険診療の差が判らないかも知れません。

私が考える「良い歯」とはせっかく治療したのにまた虫歯になってしまっては困りますので、歯を装着後もなるべく長期間安定した状態で審美および機能的回復を維持できる歯だと思います。そのためには、材料も口腔内で変質することなく安定した状態で保たなくてはなりませんし、完成した歯とご自分の歯の適合性も重要になってきます。

 そこで上記の治療の工程に戻りますが、先ほども記載しましたが保険診療においては使用する材料などは全て決まったものしか使用できません。使用できる材料は認定を受けたものなので安心はできますが、決して最新および最高のものとは限りません。口腔内というのはとても過酷な環境にあります。冷たいアイスも食べれば、熱いお茶も飲む、そして歯には歯垢などの細菌に曝されながら肉などを咬み切るために強い力がかかります。

 そのため被せ物にはご自分の歯にピッタリと適合する高い精度と過酷な環境下でも安定した状態を保つ優れた材料が必須となります。そのためには、保険診療では使用しない高い精度を誇る型取りを行い、精度の高い仮歯を装着し歯茎の安定を図ります。そして、技工所で歯を作成する際も自由診療の場合は顕微鏡を用い細部まで精度を高め、長期間安定する貴金属やコンピューターで読み込んだデータを用いて歯を作成します。作成後の装着材料であるセメントも自由診療の場合は、接着力が強く安定性の高いものを使用します。

 被せ物における自由診療と保険診療の大きな違いは、出来た歯の見栄えだけではなく各工程での精度を高めるために高い精度を誇る材料を使用し、装着後も長期間安定を図れるように見えないところで手間を掛けた手順だと思います。機能面は当然重要ですが、その状態を長く安定して使えるようにすることも考えてみてください。